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宮川の独り言 -18話-

独り言

2019年11月12日

宮川の独り言 -18話-

こんにちは、アシストエンジニアの宮川です。11月に入って急に涼しくなりましたね。初霜や初氷の観測もされたようですが、例年よりも遅いようです。ラグビーワールドカップも南アフリカが優勝し、もしかしたら日本代表はベスト8よりも強かったのでは?と期待が残る結果となったのは、うれしい限りです。

 さて、今回の独り言は、少し仕事関連のお話をしたいと思います。10月に公差設計セミナーを有料コースで実施いたしました。2日間で約8万円のコースにも関わらず7名の方がご出席いただき、皆様が有意義で自社の設計者全員に受講させたいというアンケート結果でした。

 なぜアシストが今、公差設計セミナーを実施することになったかというと、最近製造業のお客様(新規顧客含め)にお伺いし、課題をお聞きすると設計品質や製品品質におけるトラブルの話題を多く耳にしているからなんです。

・人手不足からくる即戦力化(十分なトレーニングをせずに現場へ)
・高齢化によるベテラン退職(各現場で困ったときに頼る人材減)
・各現場での余裕のなさによるその場しのぎ(各会社での設計標準見直しなどの整備が出来ない)

などの状況で、設計も過去の図面の手直しなどで対応しているため、製造現場からなぜこの寸法公差なのかと問い合わせが来ても回答が出来ない状況のようです。その結果、製造現場では手作業での手直しや多くの調整機構で時間をかけ、その製品の性能を頑張って引き出している状況が見て取れます。加工のばらつきからくる、正規分布を正しく意識した寸法公差を計算し、寸法・寸法公差をモデルや図面に記載することで現場は、手直しや調整機構などの時間とコストがかかる作業の低減につながるはずなのですが、そのことを意識されていない設計・設計者が多く居ることに気が付きました。(色んなお客様へ一般的にアンケートを取った結果が物語っています。)

 また、アンケートには面白い傾向もあります。ファブレス会社の方が寸法・寸法公差をしっかりとあるべき計算をし、設計している傾向にあるようです。自社に製造現場があると製造現場に頼る設計になり、設計品質が落ちると想像できます。これでは、ものつくり立国日本の立場がありません。これからCADもAI的な要素が入ってきて単品部品ならその部品の設計要件・材料・製造方法などを入力すると最適な形状が導き出される時代に入ってきます。しかし、そういう時代になるからこそ、製品の仕様とそれを元に構想設計ができ、理にかなった寸法・寸法公差が計算できる設計者しか生き残れない時代になってくるのかもしれません。

 今年のビジネス書大賞を取った『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』の広告にも16話の独り言で書いた【アミラーゼ問題】が載っていました。AIが台頭するからこそ、人間の本来の必要とされる重要な能力を高める必要があるかもしれません。日本人が設計したものが、アジアの製造現場で『誰がこんな設計してるんだ?こんな設計では作れない。』と送り返されては、日本人のものつくりに対する評価も下がってしまうと思います。まだ間に合いますので皆さんでもう一度基本に立ち返り頑張りましょう。当然、自分への戒めも含め。

㈱アシストエンジニア 宮川